娘である彰子が二人の男御子を生み、満ち足りた日々に自信の揺るがない道長。
そんな道長がひそかに大切にしているという姫君の存在を知り、式部は興味を引かれる。
ある高貴の血筋で道長にもゆかりのあるその姫君は、鄙びたところもあるが、弱々しく可憐な姫君らしい。
それに合わせるかのように、源氏物語のつじつま合わせのような小さなエピソードを次から次へと執筆していく式部であった。
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何か事件が起こったわけでもなく、膨大な源氏物語の中で話の筋が合わない点があるのでは、という女房たちの問い合わせからの、雅かやな王朝物語らしい始まり。
明石の姫君があっという間に育っているのがつまらない、とのことで、紫の上が明石の姫君を引き取って手許で養育している間の細々としたことが書かれる。
私もこの辺りの、華やかなお正月の雰囲気や女君達がたくさん暮らしている描写が割と好きなので、気散じにこういうものをよみたいという気持ちはとてもよく分かる。
求めに応じて書かれる物語の性質、というものをよく示しているようにも思えた。
とまあ、実際に道長が無理やり世話し、あわよくば手に入れてやろうとしている瑠璃姫と、源氏物語の玉鬘の物語とが、追いつ追われつするかのように進展していくところが面白い。
書き写されて世に広まるという時間の差があるからこそ成立する、不思議な感覚。
物語の姫君はこうだったけど、実際の姫君は……というところが小気味好い。
それにしても、道長はけして嫌いではないけれど、中年男は困ったもんだよなというのがしみじみと感じられる巻でもあった。
一人また一人と信用を失っていって、心が離れていく。憎まれてもいる。そして迎えた望月で、その後は欠けるしかない。不憫だ。
一条帝の崩御、その後の三条帝と道長の不和、三条帝の徳がないことを示すかのような世の乱れ。
下々の者がどんな生活をしているのかなど、上から下から中くらいの位置から描かれていく。
そんな中で出来上がる「若菜」
物は与えられても、力で強引に変えられても、心は自由にさせないという長い式部の戦い(執念深い)がうねうねと続いているのでした。
宇治十帖編もあるらしい!
これは楽しみ。