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2009(Mon) 23:55
水の時計 初野晴
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少年暴走族の幹部だった昴は、居場所をなくしていたところを謎の医師・芥に拾われる。
頼まれた仕事は、脳死状態のまま、死ぬこともなく生きることもなく、機械に繋がれているだけの少女・葉月の、臓器の輸送だった。
身内もなく、莫大な遺産だけを持つ葉月は、臓器提供の意志を表明する人間がいない。けれど、月明かりの中でだけ、アンプから声を発することができた。
葉月は頼む。まるで「幸福の王子」のように。この身体を必要としている人に分け与えてほしい、と−…。
「幸福の王子」を何の捻りもなくそのまま現実的に書いたらこうなりました!……というようなグロさです。「魍魎の匣」思い出した。
ですが、この作者も読みやすさという点にこだわりがあるようで、あまり心理的なグロさはないです。角膜、腎臓、肝臓〜と取っていく度に、昴の髪は白くなり精神的に参ってきているらしいのですが、その辺りはオムニバス形式で、臓器を与えられる側の視点で物語は進みます。
なので、昴の罪の苦しみや葛藤がありません。
葉月との交遊がどんなものなのか、とかもない。
だから、読みやすい。それが、軽いとかご都合主義と言われる所以なのではないかと。
私にはとても面白かったです。「漆黒の王子」よりはだいぶ好き。
真ん中の、臓器の提供を待つ人達の悲喜こもごもも、作中作でありながら本編に影響を与えていてよかったし。序章で一旦姿を消した昴が終章で主人公として戻ってくるのも、ギャップがあっておもしろかった。
ご都合主義なのはファンタジーだからいいとして、ミステリ色がないのもまぁいいとして、やっぱり昴と葉月の関係かなぁ。
過去の馴れ初めよりも、出会ってから今までの間に交流を深める方が、ラストがぐっと引き締まったと思うので、そこが残念。
間接的にとはいえ、人を一人、少しずつ殺していっていることに対する罪の意識。
葉月は法律的には死んでいるからいいのだ、という開き直り。
こんな想いをして、身体を削って捧げても、数人の助けにしかならないという虚しさ。
そして、臓器を与える人間を選ばなければならないプレッシャー。
などなどを書き込んだら、すごく重たい、それこそ「人間を書いた」小説や、社会派な話になるのかもしれませんが……。
どうも、どの作品においても、この作者はそれを避ける傾向にあるみたいです。
7年前の小説ですが、あまり古さも感じませんでした。




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