幼なじみのキス、友達同士のキス、長年付き合ってる恋人同士のキス、ちょっと気になり始めた相手とのキス、主夫から妻と娘へのキス……などなど。
様々なキスを描いた短編集。
パステル調の装丁に、可愛らしいタイトル。
頁を開いてみると字数も少なめで、若い世代向きなのかなと思ったら意外と肉肉しかった。
引っ込み思案でもないし、がっついているわけでも無い。けれど自然な欲求の延長として(あるいは仕入れた情報の実践として? )恋愛対象が欲しいよね!異性が欲しいよね!という健やかさがあった。
食欲とか、周囲と上手くやりたいとか、仕事とか、ごくごく普通のことに関する欲と同じように。
恋愛だけ特に突出して画かれていない、そのせいで余計に特別な相手との特別な触れ合いが良いものに感じられるという、なんだかいいなぁと思える話ばかりだった。
特に最初の二編、高校生の女の子の話が好きだ。
あの時代の緊張感と強さ。それを先入観や偏った見方を感じさせることなく読める小説、って案外少ない。
どの話も、夢見がちではなくて、どちらかというと現実的な冷たさが紙一重なのに絶望しないで済むのは、その現実の重苦しさが人一人分といった感じがするからだろうか。
壮大なドラマではなくて、身体一つ分のドラマ。むしろドラマ性なんてないのかもしれない、というくらいの、頼りないものを広げようとするかのような。
だからこそ、結構重苦しく読んでしまったりもしたけれど。