This Category : 【推理小説】2012.05.13 *Sun*
立花美樹の反逆 THANATOS 汀こるもの
美樹、真樹と喧嘩して、家出のような誘拐のような形で、カルトな新興宗教の本拠地に閉じこもってしまう。 それをアマノウズメよろしく連れ帰ってこいと命じられた生物部員達だが、想像以上に過酷な労働と食事に音をあげそうになりつつ、斎場に横たわる死体らしきものまで見つけてしまい……。 という、クローズドサークルにて展開される、宗教施設と学園ものが混ざったミステリかと思ったらそれはそれで大間違い。 美樹のお目付役の高坏に湊警視正の大人の事情の話が絡んできても、決して警察ものではないように、相変わらずなんなのかよく分からない話だった。 ジャンルなんて必要ない馬鹿げてる、という人もいるたろうけど、評価するにしてもただ感想を自分の中でだけ固定するにしても、やはりジャンルははっきりしていて欲しいなと思ったり。 章がばらばらで、ミステリは謎が解けるから面白いんであって自分で解きたいとはさらさら思わないからか、なんだか普通に読んだ。叙述トリックというか叙述ネタが好きな作家のイメージがあるので、もう地の文すら怪しいと思いながら読む始末。 それが楽しいのかどうかちょっと分からなくなってきた感じがある。 死神としての能力を国家権力が試し、利用しようとするスケールの話になってくるんだろうか。 笑っちゃいけないミステリなので、笑うのは我慢しなければなりません。 湊がよわっちくてアラフォーなのに美青年でサスペンダーでかっこいいので、それだけでいい。 2012.05.10 *Thu*
高原のフーダニット 有栖川有栖
作家アリスと火村のシリーズ短編集。 叙述トリック叙述トリックとやたら最初から前ふり感のある「オノコロ島ラプソディ」は、壮大な仕込み落ちがあるのかしらとドキドキしてしまった。 三毛猫ホームズと同レベル扱いされるアリス(笑) 掌編の夢オチ的なものばかりを集めた「ミステリ夢十夜」は、論理的に結末を回収できなくてもいいから、続きを書いて欲しいと思うくらい面白かった。つまりは、ミステリじゃないってことになるのかもしれないが。 取り合えず、アリスは火村の夢ばっかり見てるんですね分かります、みたいな気持ちになった。 「高原のフーダニット」は、面白い展開でもドラマでもなんでもないけれど、どこが問題なのかということが明らかになっていく過程、そこがピタリと定まると犯人も自然と定まるという本格的なミステリ。 このシリーズも二十周年らしい。 ちょっと笑ってしまうような(あり得ないだろうと突っ込みたくなるような)展開があまりなくなり、手堅い印象がますます強まった。 2012.03.15 *Thu*
奇面館の殺人 綾辻行人
同業の小説家と容姿が似ていることから、不思議な集まりの替え玉を頼まれた鹿谷。 断るつもりだったが、その会場となる別荘が中村青司の作であると知り鹿谷は俄然行く気になる。しかし、年に一度の大雪に見舞われ、その別荘「奇面館」は外界との連絡を絶たれた状況になってしまう。 * 館シリーズは全部読んでるはずだけど、全部曖昧にしか覚えていない。覚えていない→ストーリー性があんまりない→パズルっぽい→本格?……とミステリ好きの人には目を剥いて怒られそうなことをついつい思ってしまうほど、館シリーズの中でも特に奇面館はあっさりだった。 わざとらしいミステリの雰囲気もなく、吹雪の山荘ならではの緊迫した緊張感もなく、計画どおりなのかイレギュラーなのか分からない第二、第三の事件も・・・むにゃむにゃといったところで、拍子抜けといった感じだった。 館の主人の主義である、本質は表層にある、というのが起こった出来事と合わせて考えると面白かった。 探偵役の鹿谷が最初からキャストとして混ざっている点も、なんだか事件を容易に感じさせている点かもしれない。 中村青司の館だから何か禍々しいことが起こるのだ、という恐ろしさもあまり無い。 ので、やっぱりあとがきにあるとおり、軽い長編、パズルっぽいものとして楽しめばいいんだろうと思う。 現実としては、それでも十分奇なり、なのに、ミステリとしてみると凡庸に見えるというのもまた、作品がかぶった面に騙されているといってもいいのかもしれない。 2012.03.12 *Mon*
聴き屋の芸術学部祭 市井豊
個性豊かな面面が揃うT大学芸術学部。 特にアドバイスをする訳でもないのに、なぜか皆が話を聞いて欲しがる「聴き屋」体質の柏木の元には、話を聞いて欲しい人が群がってきては、勝手に話したおして帰っていくということが日常茶飯事だ。 そのため、芸術学部祭で起こった謎の焼死体の事件、模型破壊事件、なとなどの不可解な出来事を、探偵の真似事を好む友人の川瀬よりもちゃんと解決できてしまったりするのだった…… * 殺人事件が起こっていても、警察の操作が行われていない(あるいは描写されていない)と、日常の謎もののように感じてしまう。安楽椅子探偵もののようでもあり、日常の謎のようでもあり、割とテイストばらばらの連作集だった。 途中までしかない脚本をどう演じたらいいのか考えさせたり、模型部の模型が壊れた原因を明らかにしたりの話などは特に、犯人(というか事実を知る人)の告白によるところが大きいような気もしたり。がちっと、これしかない!ということもなく、ずっとこう思っていた事実が一回転する!というのでもなく。 普通にありそうな日々のことを、シンプルな出来事に分割して、別の舞台に取り上げて論じる面白さ。 プラス、色々聞き出そうとする探偵役ではなく、ただ相槌を打ってるだけの聴き屋がいつのまにか情報を集めてしまって、道筋を見つけ出すという、受け身的な面白さ、かなと思った。 もちろん、大学ものとしても読んでて楽しかった。 ただでさえ大学というところは変人には不自由しないところではあるのだが、この芸術学部のスマートに軽いノリが飄々としてて良い。 聴き屋の柏木が所属する、ザ・フールという怪しげな変人ばかりと言われるサークルの実態が今ひとつ明らかにならないのだが、それはこれからなのかな。 毎回毎回、二百人くらいいるという部員が徴収されて出てこれば馬鹿馬鹿しくって面白いのに、と思った。 やはり、表題作が好きかなぁ。 この空気の軽さ、悲嘆のない反射のような会話のやりとりが良かった。 2012.02.17 *Fri*
絶海ジェイル Kの悲劇’97 古野まほろ
イエ先輩こと八重洲家康が絶対に敵わないと思うピアニストの祖父・八重洲清康が生存していると告げられ、会ったこともない祖父に会うために無人島へと向かったイエ先輩とユカ。 ところが、そこで待ち構えていたのは、五十年も前に起こった監獄の脱獄事件の再現の要求だった。 忠実に再現される憲兵と思想犯の役割から、イエ先輩は見事脱獄してみせることができるのか。 * そろそろ古野まほろのミステリじゃないのも読みたいような、読めそうな、そんな気がしてきた。かといって、どんなジャンルでどんな小説がいいのかと聞かれても困るけれども。 とにかく、無事東大に合格したユカと、ユカの先輩以上恋人未満のピアノの師匠でもあるイエ先輩との、つまりは過去のあるアンニュイに美しい青年とそれを癒す天使になれるかどうかの瀬戸際の娘の無垢さとの勝負、みたいな土台に乗っかった本格ミステリな訳でした。 近年のまほろらしい読みやすさで、紙面の色が薄く感じるくらい。ふりがな、当て字も少なめ。物足りないと言えば足りないが、引き換えにした読みやすさも、これはこれで良いと思う。 最近あまりミステリに食指が伸びないので、ただの感想としてでさえ、ミステリ的にどうこうといいづらいものがある……。 ただ、荒唐無稽で、そんな馬鹿な!と言いたくなるほど、ミステリらしいという気がするので、ロックっぽいロック、というような意味で、ミステリっぽいミステリ、と思った。 親切すぎる、あからさますぎる、フェアすぎる? シンプルな謎と解の上に、どろどろした感情と悲劇と美しい復讐、おぞましい拷問がきれいに盛り付けられている、そんな印象だった。 おすすめ本
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