夜思比売の栞 本の感想(一般文芸)

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January February March April May June July August September October November December
2009(Sun) 23:03

東のエデン 神山健治

本の感想(一般文芸)

小説 東のエデン (ダ・ヴィンチブックス)小説 東のエデン (ダ・ヴィンチブックス)
(2009/09/16)
神山健治

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勝手に世界を救うことを求められ、不可能を可能にしてくれるノブリス携帯と、100億の電子マネーを渡された12人のセレソン。
……のうちの一人、滝沢は自分の記憶を消去し、素っ裸でホワイトハウスの前に立っていた。
そこで出会った咲と行動を共にしながら、記憶を取り戻そうとする滝沢。
日本に落とされたミサイル、二万人のニート失踪事件などなど、不可解な謎を追いかけつつ、「持てる者の義務」を果たして、このゲームをクリアするものは現れるのだろうか。



アニメは見てないのですが、ノベライズということでいいのでしょうか。
出だしがホワイトハウスであり、ミサイルが落ちたとか言ってるから、国際的な広い範囲のストーリー展開になるのかと思っていたら、案外狭い範囲の話に落ち着いていました。なので、思ってたより読みやすかった。
100億の金を世界を救う・変えるために使え!ゲームからの逃亡は死、お金を使い切っても死、という設定が素直に面白い。
世界を救うためには決して多くはない金をどう使うか、個人的にはその使用の多様性をもっと見たかったかも。
そして、滝沢がどんな結論を導き出すのかとても楽しみだったのだけど、まぁ持ち越しみたいな感じになってしまい、残念といえば残念。

途中まではヒロインの咲の、義兄への恋心や偶然出会った男を王子様として運命的に感じる乙女チックさがあったのに、後半では忘れられてしまった感があったりします。
あと、東のエデンというサイト?
iPhoneのセカイカメラみたいなものかと思いながら読んでましたが、これも小説の中では際立った活躍をしていませんでした。やっぱり、アニメと小説では、そのまま同じように表現しても伝わるところが違うのだろうな〜と思ったり。実際絵で見ると、すごいって思うんでしょうね。
ところどころのエピソードが都市伝説っぽかったりするのですが、文章だけだとどういうニュアンスで読み取ればいいのか解らなかったりしました。
けど、総じて楽しいお話でした。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Wed) 22:59

まほろ駅前番外地 三浦しをん

本の感想(一般文芸)

まほろ駅前番外地まほろ駅前番外地
(2009/10)
三浦 しをん

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便利屋を営む多田と、その元同級生で多田の元に居候を決め込んでいる行天の、日々の生活を描いた短編連作集。

ちなみに前作は、読んだはずだけど全く覚えておらず……笑。
なので、多田と行天ってできてるんじゃなかったっけ?と思いながら読んでました。あはは。
一応、できてはないみたいです。公式には。

多田と行天の仕事の依頼を中心にしながら、かつて関わった人物の視点からこの二人を眺めたり、まほろという街を眺めたりという、生活感の溢れる話でした。
人間関係の範囲とか地理的な範囲が、生活圏って感じで。
読んでて変に馴染むなぁと思うのは、そういうところからくるのではないかと思います。

多田と行天の関係も、どーもこーもならない。過去の痛みもなくならないし、未来の展望もない。
「今」があればいい、というと投げやりな感じがしますが、どっちかというと「今」があるありがたさ……ですかね。
清濁合わせのんで、一日をやり過ごすタフさといいますか。
そういう日常の積み重ねから出来上がる、凡庸な歴史の小説でした。

なんとなく読んでおかないといけないかな、というくらいで。そんなに愛着ももてなかったです。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Fri) 23:00

これでよろしくて? 川上弘美

本の感想(一般文芸)

これでよろしくて?これでよろしくて?
(2009/09)
川上 弘美

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普通の主婦である菜月は、ある日買い物の途中で元カレのお母さんに出会う。そして勧誘されたのが、「これでよろしくて?同好会」
それは単に、月に一度、様々な年齢・立場の気のおけないメンバーが集まって、男女関係や家族の謎といったことについて、気楽な議論をする集まりだった。
なんとなく家族らしくない菜月と夫。それに比べて、驚くほど家族らしい夫の家族や義理の妹達に、驚いたり、違和感を感じたり、悔しかったりする菜月。
毎回毎回、おいしいものを食べながら話していくうちに、菜月の環境や心境に変化が訪れる−…。

ちょっと好意的に粗筋を書いてみました・笑

川上弘美のぼんやりと横たわった現実感はそのままに、話の筋はとても分かりやすく、読みやすい。
テーマが壮大なのか矮小なのかよく解らないけれど、これは小説自体がそんな感じなので仕方ないのかな。最近の川上弘美がとっつきにくかったからか、随分面白く感じました。
これでよろしくて?とでも言いそうな、賢くてちゃんとした大人の女の人達がとても魅力的。

実際に経験していないことでも、この同好会で取り上げられる議題のおかしさ、変に説得力のある意見に、思わず聴き入ってしまいます。そういう意味で音が聞こえてくるような、話しかけてくるような本。
これが相手を議論で打ち負かそうとか、どちらが正しいか決めようとするところまでいくと、ダメなんですね。討論で勝ち負けは決められても、実際の話題に上がっている事柄の勝ち負けは決まらないわけですし。
小説としては、ここでキレればいいのに!とか、がつんと言ってやれ!とか思うのですが、菜月は言わないし行動もしない。

あくまでも、ゲームとしての討論ではなくて、この辺でいいんじゃない?という「これでよろしくて?」の姿勢が、一つの世の真理だなぁと思いました。

多分、男の人が読むと違った感想を持つのではないかな……と思いますね。
でも女の人が読めば、積極的に賛同するほどのことでもないフツーのことじゃない?と感じてしまうのではないかと思います。
そこに、おばけが出るのかもしれませんね。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Sun) 23:01

かけら 青山七恵

本の感想(一般文芸)

かけらかけら
(2009/10/01)
青山 七恵

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優れた短編小説に与えられるという川端康成文学賞受賞作「かけら」を含む短編集。

家族5人で出かけるはずだった日帰りバス旅行が、ひょんなことから父と娘の二人旅行になってしまう。
特に仲が悪いわけでもないが、これといった存在感のない父と過ごす時間の居心地の悪さ。家族としての父と人間としての父を観察して、どちらも父のかけらみたいなものなんだろうと気づく。(「かけら」)

結婚が決まり、同じマンションに住んでいる元カノのことばかり思い出すようになった「僕」
それは、引っ越しの準備をするのと同じように、元カノの思い出を忘れるために一通り思い出している作業なのか。(「欅の部屋」)

西表島から大学見学のためにやってきて、滞在することになった歳の離れた従姉妹の扱いに戸惑う新婚夫婦。
何を考えているのか分からない従姉妹を、可愛いと思ったり、不愉快に思ったり。(「山猫」)

いつも思うのですが、こういう純文学っぽいのって、特に短編はどういう顔をして読めばいいのか解りません・笑
小説や物語として読むと「ふーん……」で終わってしまいます。
もちろん全部テキストとして読めば、いろいろ発見というか、こういう議論がなされるだろうな、という予想はできますが。
手を変え品を変え、男女の関係に家族の在り方、現実への不安やどうしようもない虚無感、救いを日常に求めるか嗜好に求めるか、というようなことを書きつづける文学も。
新しいキャラとシチュエーションでいかに萌えつづけるか、というジャンルも。構図はよく似た色をしたなんとかみたいです。

「かけら」は、父親の存在感の薄さが羨ましかったです。ですが、それもまた彼の一部にすぎない。観察されていないところで、この父親がどんな人なのかは分からないので、なんとも言えませんね。
兄と取っ組み合いの喧嘩をした父と、転んだお婆さんを親切に助ける父。
当然、家族を助けている状況もあったはずなのに、娘の記憶には出てこない。他人を助け、おばさん達にいいように使われているにしても、他人の役に立っている父を見て、娘は喜ぶよりむしろいらついています。
これは「山猫」で、デートの最中なのに外国人の道案内をしてあげた彼氏に怒る彼女、の姿とも似ているような気がします。
他人なんてどうでもいいじゃないか、という正直な思想の中の「他人」が、自分以外ではなくて家族以外という辺りに、ほのぼのとすればいいのかヒヤッとすればいいのか迷うところ。
そう思うと、兄嫁の不在、というのもなんだか意味深です。個人主義から家族主義に、と単純に言っちゃっていいのかもよくわからないし。

「欅の部屋」も、単に男が今の婚約者と別れた元カノを比べて、ここが違うとかここが似てるとかいう感傷的な話なのですが、新しい家族を作るに当たって、必要なモノ不必要なモノをより分ける作業をしている、と捕らえるならば、その達観は恐ろしいくらいです。
「山猫」で心を開こうとしない従姉妹に、我が家のルールを教え込もうとしたり、従姉妹を受け入れたことを示すために我が家のルールの方を変更したり。
現代の家族になるためのルール、あるいは家族という範囲、について、淡々と書いた小説である! という、こういう感想でいいんでしょうかねぇ。

読書会とかで、あーでもないこーでもないと言い合うのには面白い本だと思います。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Thu) 11:29

悲歌 中山可穂

本の感想(一般文芸)

悲歌  エレジー悲歌 エレジー
(2009/09/18)
中山 可穂

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「隅田川」
美しい獣のような女子高生二人の恋人同士は、運命の理不尽さに憤り、その勢いのままに心中する。その生前の二人を見ていた「わたし」は、彼女達が身を投げた隅田川の写真を撮りつづけ、生き残った一人が後を追おうとしたら止めなければ……と決意しているが、そこに現れたのは薔薇の刺繍のマントを身につけた不審な男だった。

「定家」
ある作家がベランダで感電死したマンションに、その作家の評伝を書くために住み込むことにした「わたし」。その作家の幽霊が出るという噂だったが、「わたし」はその死の知られざる真相を知ることになる。

「蝉丸」
師事していた人の娘と息子を献身的に世話してきた博雅。その姉弟の音楽の才能を愛し、やがてバンドを組み、成功への道を駆け上がっていくが、博雅の結婚でその三人の関係が呆気なく壊れてしまう。

……という3つの短編中編からなる『悲歌』です。久しぶりの中山可穂でした。

視点となる「わたし」と博雅といった登場人物が、基本的に冷静で、痛みを知る大人でした。
叶わぬ恋に、理不尽な想いに、身も心も焼き尽くしたその後、といった人達ばかり。なので、物語の渦中に飛び込んでいくような情熱はなく、悲鳴を上げている人をじっと見守っているような、耐える辛さみたいなものがテーマだったように思います。
同性愛を書くことが多い……ってかほとんど?な作家なので、この本は多分とっつきやすい方だとは思います。

言葉に出したりはしない、肉体的な関係も持たない、という関係の中にこそ、一番強い恋愛が起こっていたのだということが、この繋がりのない3編に絶えず出てくる関係性です。
たいていそれは無くした後に気づき、もうどうしようもなくなってから、過去の恋を悼む。人物達が一様に冷めているのも、なんだか納得です。
けれど最後の「蝉丸」では真の恋の成就の予感があり、希望を感じさせる終わりになっていました。

川を流れる薔薇の色だとか、墓石に絡まる蔦植物のはしたない赤だとか、強烈な印象を残す場面が多くて、技巧的にはうまくなったのだろうと思いつつも、あんまりどろどろしてない所に違和感もありました・笑

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