夜思比売の栞

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January February March April May June July August September October November December
2009(Tue) 23:55

神々の午睡 あさのあつこ

本の感想(児童書)

神々の午睡神々の午睡
(2009/09/30)
あさの あつこ

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かつて、大神が創った世界には、神と人間とその間の存在ともいうべき箜と呼ばれる存在がいた。
箜であるリュイは大神の三百一番目の子供。同母の姉のシムチャッカは父神から雨と雲を司る力を与えられ、箜から神になっている。
シムチャッカのための祭の準備が進む中、雨が降り止まず、恵みの雨が厄災の雨になりつつあった。不審に思ったリュイがシムチャッカを問い詰めると、シムチャッカは人間の男に恋をし、そのせいで雨を操る力を奮えなくなったと言う。
この女神と人間との恋の行方は−…



アニメディアで連載されていた、あさのあつこ流神話ストーリー。
CLAMPっぽい絵!と思ったら、本物でした・笑

神話も好きだし、たくさん神が出てくるファンタジーも好きなので、結構楽しんで読めました。
神々の話から、神と人間の話、人間達の話、そして再び神の話。
神だって恋もすれば嫉妬もするし、失敗もすればお節介もするし、情もある。
古今の神話の「らしさ」を踏まえながら、どこか現代向きにアレンジした、ラノベの世界設定とかにありそうな、そんな感じで。
人には人の、神には神の、苦しみや喜びがあるというところにぐっときました。

むしろ一話一話をもっと短くして、キャラがどうこうとか考えず、本当の神話みたいにみっちりと神話を創ってくれたら、すごい面白そうだなあと思ったりも。
語り手のリュイが主人公というほど出てこなくて、むしろ全編に渡って活躍するのは死の神グドミアノ。←ちなみに葡萄色の目の美青年♪
人間の欲深さ、愚かさ。そして底無しの愛情を描きつつ、それでも主題としてあるのは、神々の愚かさであり、慈愛であり、孤独であったように思います。
人間の男に恋をし、後を追ったシムチャッカも。
人間の娘に、自分の叶わぬ想いを重ねた沼の神も。
ほんのつかの間の人間との交遊を楽しんだ風の神も。
皆、どこか孤独で、強大な力を持っているのに、人間に惹かれてしまう業を持っているかのようです。

神ではなく人間になることを願ったリュイの選択も、分からなくはないな。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Mon) 23:03

サウンド・エシックス これからの「音楽文化論」入門 小沼純一

本の感想(小説以外)

サウンド・エシックス―これからの「音楽文化論」入門 (平凡社新書)サウンド・エシックス―これからの「音楽文化論」入門 (平凡社新書)
(2000/11)
小沼 純一

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ですます調で書かれた、とても読みやすい新書でした。その読みやすさ故に、なんだか騙されているような……言いくるめられてるような……笑
そういう気持ちに絶えずなってしまいましたが。

内容はタイトル通り、現代の定義するところの音楽について、多角的に、細かく、できるだけ偏った見方をしないように〜書かれたもの。
分かったような分からないような……感じなので、なんとも説明しがたいのですが。ところどころで、自分が音楽に対して持っていた疑問だとか、もやもやしたものを指摘してくれて、面白かったのは確かです。

同じ音でも音楽でも、人によって聴くものは違い、聞き手がいないと完成しないのが音楽だとしたら、音楽は存在そのものが単数形ではないだけでなく、受け取る側も含めてさらに複数の存在になるのかな〜とか。
「いまここにしかない」ものでなく、「いつでもどこでも」なものになった反復の退屈さと、いわゆる古典の名作として聴かれ続けているものの差はどこにあるのかな〜とか。ライブとかコンサートというのは、どういうものなのかな〜とか。
音楽は時間と共にあるものだけれど、空間も無視できるものではなくなっているし。視覚情報によって、聴こえてくるものが違ったりとか。

2000年の本なので決して新しい本ではないのですが、音楽について、いろいろ考える良いきっかけがたくさん転がっている良い本でした。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Sun) 22:52

冬の薔薇 パトリシア・A・マキリップ

本の感想(海外小説)

冬の薔薇 (創元推理文庫)冬の薔薇 (創元推理文庫)
(2009/10/20)
パトリシア・A・マキリップ

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《「わたくしは夜」と、答えが返った。その通りだった。「わたくしは冬の歌」すると、その響きが聞こえた。「わたくしは血の色の月が落とす影、その中で収穫するすべての風」その動きが感じられた。「わたくしは死の冬」
 女は母さんの顔をしていた。》

廃墟になっていたリン屋敷に、跡取りだというコルベットという青年がやってきて住み着いた。
隣のロイズは、裸足で森の中を歩き回り、植物を集めたりするのが好きな自由奔放な娘。しっかりしていて実務的で、次の春に結婚する予定の姉のローレルとは正反対。
ロイズは、コルベットに纏わり付くような光を、風の中で迷い助けを求めているようなコルベットを、人間の住むところではない美しすぎる世界の女王を、時々目にすることになる。
不思議な世界と呪いに魅入られたコルベットを救いたいとロイズは思うようになるが、コルベットが見つめているのは姉のローレルだった。



私にしては珍しく本文引用してみました。
一日の中の夜、季節の中の冬、一生の中の死。絶対に避けられない、何か冷たくて恐ろしいもの、けれど常にそばにあるもの、というのが現れてて好きな部分。

さて、モデルとなったバラッドでは、恋人を妖精から取り戻すためには、恋人がたとえどんな姿になろうとも抱きしめて放してはならない、という愛情を試される話だったと思います。類似の話がいっぱいあるので、どれが本家か分かりませんが……。
しかしこの本の場合、恋人ではないのです。
一人の青年に姉妹で惹かれてしまって、むしろ姉の方が通じ合っているという……。多分、半分向こうの世界に囚われているコルベットには、地に足のついたローレルの方が魅力的だったのでしょう。
行方不明になったコルベットを慕い、冬に取り付かれたようになってしまい、このままでは母のように死んでしまうだろうというローレルのために、そしてコルベットをこちら側に戻してやるために、ロイズは向こう側へと赴きます。

なんとなく話のテーマは、現実と幻想なのですね。
現実世界の裏にぴったりと張り付いたもう一つの幻想の世界は、よく見える目を持ったロイズには身近な世界だったのではないかと思います。
その世界に属していたコルベットだからこそ、特別に思い、惹かれた訳ですし。
絶えず、幻想の世界に住んでいると揶揄され、現実的になれと言われつつ、自由だったロイズ。
それでもロイズは姉の生と、コルベットの自由のために、「人間でなくてはならない」のです。
現実的で地に足のついた娘でないと、風にさらわれる木葉を捕らえることはできない。

コルベットがどんな風に姿を変え、それをロイズがどんな風に抱きしめ続けるのか。
ロマンチックというより、切ないです。それにとても現代的。夢見ることや空想に生きることを風刺されるのは耳に痛いけれど、その価値の優劣を決めるのもまた自分自身ということでしょうか。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Wed) 23:29

ツグミはツグミの森 竹本健治

本の感想(ミステリ)

ツグミはツグミの森ツグミはツグミの森
(2009/10)
竹本 健治

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事故に遭って久々の学校復帰の後、クラスのイジメの対象が自分に移ったような気がして落ち着かない潤。そんな潤をかばってくれる親友の友雪と、変人の部長、水泳部と兼部の咲良、脚フェチの写真部の庸司、後輩の人形のような双子とが、天文部のメンバー。
夏休みを迎え、天文部の部室での天体観測の合宿に入ることになるが、大型台風が訪れ、ろくに観測もできない。
そして潤は、友雪が水泳部の先輩に失恋したのを密かに心配していた。



ミステリなんだけど、ミステリらしくないのです。
途中まではヤングアダルトにありそうな、明るい不安というか、ぽっかりと広がる空間への不安というか。どこか不穏な空気を孕んでいるのに、それを見て見ぬふりをしているような。
そんなぎこちない青春もののような、ちょっとした文学作品のような読みごたえでした。

ミステリのお約束とも言える、最近の事件と過去の事件の因果関係や、一対一対応でない犯罪への考察の導入、ツグミの森という名前の由来もそうですが、何か謎を解く鍵になるのではないかというようなものが、無造作におかれてます。
そして、雑学の豊富な部長、変な言動の双子。キャラの作り方も、嫌味なくらいにミステリ風。

それでいて、読みながらちっともミステリっぽくならないのですよね・笑
幼女殺しの事件は解らないまま。その他のことも、天文部員達が推理を披露しあうようなミステリ的シチュエーションにはならず。
なにかおかしいという違和感と、潤の趣味だという意味深な短歌、そして潤の記憶のイメージともいうべき描写が続く、独特の雰囲気のある小説でした。

↓以下、本文の内容に触れています。未読の方はご注意↓

仕掛けは珍しいものではなかったので、すぐに気づく人が多いのではないでしょうか。冥王星なんて、あからさまだし。
だから、気づいてから、なぜ?と考えさせたいものなのかもしれません。
てっきり潤の事件が関わってくるのかと思ったら、関わってこないし。それは幼女の事件も関わってこないことにも言えるのですが。
要は、こういう事件があったら、ミステリの小説上では関係があるに決まっている、という思い込みを皮肉る結末でもあったように思います。

それでも、終盤でほんの一瞬だけ、探偵役が場を完全に支配します。だらだらと潤の思考が続いてきた本編において、まばゆい閃光が差し込むような瞬間。
論理もフェアも何もないですが、動機にはすごく納得〜な展開でした。

一瞬犯人が見る凶暴な夢。
その後にくる完全な空虚が恐ろしい……。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Mon) 23:07

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈8〉日常の価値は非凡 入間人間

本の感想(ライトノベル)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈8〉日常の価値は非凡 (電撃文庫)嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈8〉日常の価値は非凡 (電撃文庫)
(2009/09/10)
入間 人間

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この、みーまーのシリーズのイラストレーターさん。「左」氏が、サンホラ絵とか書いてた人らしい〜って聞いて、ウィキからご本人のサイトに飛んでいってみました。
本当に物凄くサンホラの絵の人でした!
だからなんだということもないのですが、いきなり好感度が上がってしまいました!うん。地味にこっそり応援しようと思いました。

さて、みーまーシリーズも終わりそうだったり終わらなさそうだったりして、もう8巻目です。
今回は、急に新婚旅行(もどき)を思い立ったまーちゃんとみーくんが沖縄に旅行にやってきて、ビジネスホテルに毛が生えたようなホテルの17階における死体の謎を巡る群像劇。
みーまーバカップルコンビは、序章と終章にしかでてきません・笑
あとは、その他の登場人物たちに観察される、小指に物理的に穴を開けて赤い糸と繋げているヤバいカップルでしかない、と。
なので、みーくんの嘘が読みたい!とかいう人には、あまり好まれないみたいです。

とにかく、みーくんが一人称じゃないというだけで、読みやすい。読みやすいけど、ほとんどが痛々しいキャラなので、やっぱりイライラはするのですが。
ロリコンの探偵とその相方の少女、缶詰中の作家、迷い猫、飛び降り自殺志願中の女、後輩の女の子とのホテルデートを待っている大学生、窓の外を行き来する不審な中年男、夫にべた惚れの妻に、謎の殺し屋、、、といった面々の視点を代わる代わるに繋げた作りです。
いろんな立ち位置の人物がそれぞれの行動と時間から事件の真相が浮かび上がる……というおもしろさがあるのかな。
でもそこはこの作者なので。群像劇というか一人劇にしか見えないのですよ。なので、なーんか冗長な感じがぬぐえないまま、終わってしまいました。

キャラは意外なつながりがあったり、別シリーズのキャラが出てきたりと、ちょっと遊び心に満ちていましたが。
そして驚愕のラスト。
最近、ラストでひっぱるなぁ〜。

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January February March April May June July August September October November December
2009(Sun) 23:03

東のエデン 神山健治

本の感想(一般文芸)

小説 東のエデン (ダ・ヴィンチブックス)小説 東のエデン (ダ・ヴィンチブックス)
(2009/09/16)
神山健治

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勝手に世界を救うことを求められ、不可能を可能にしてくれるノブリス携帯と、100億の電子マネーを渡された12人のセレソン。
……のうちの一人、滝沢は自分の記憶を消去し、素っ裸でホワイトハウスの前に立っていた。
そこで出会った咲と行動を共にしながら、記憶を取り戻そうとする滝沢。
日本に落とされたミサイル、二万人のニート失踪事件などなど、不可解な謎を追いかけつつ、「持てる者の義務」を果たして、このゲームをクリアするものは現れるのだろうか。



アニメは見てないのですが、ノベライズということでいいのでしょうか。
出だしがホワイトハウスであり、ミサイルが落ちたとか言ってるから、国際的な広い範囲のストーリー展開になるのかと思っていたら、案外狭い範囲の話に落ち着いていました。なので、思ってたより読みやすかった。
100億の金を世界を救う・変えるために使え!ゲームからの逃亡は死、お金を使い切っても死、という設定が素直に面白い。
世界を救うためには決して多くはない金をどう使うか、個人的にはその使用の多様性をもっと見たかったかも。
そして、滝沢がどんな結論を導き出すのかとても楽しみだったのだけど、まぁ持ち越しみたいな感じになってしまい、残念といえば残念。

途中まではヒロインの咲の、義兄への恋心や偶然出会った男を王子様として運命的に感じる乙女チックさがあったのに、後半では忘れられてしまった感があったりします。
あと、東のエデンというサイト?
iPhoneのセカイカメラみたいなものかと思いながら読んでましたが、これも小説の中では際立った活躍をしていませんでした。やっぱり、アニメと小説では、そのまま同じように表現しても伝わるところが違うのだろうな〜と思ったり。実際絵で見ると、すごいって思うんでしょうね。
ところどころのエピソードが都市伝説っぽかったりするのですが、文章だけだとどういうニュアンスで読み取ればいいのか解らなかったりしました。
けど、総じて楽しいお話でした。

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